>>>→TOPへ

西田淳紀 /剣道を通して学んだ事

■■■受賞者一覧へ戻る

平成21年度 第31回小学生の部 最優秀賞

近畿地区代表
兵庫県 照道館段上少年剣道会

 「何やってんの、早く用意しなさい甘えてたらあかん、一日休めば三日遅れるんやで」こんなやり とりが毎日、仕事から帰ってきた母と僕の戦いです。たたかれ、けとばされ、テーブルの足にしがみ つき抵抗しても車に引きずり乗せられ、道場に着くと背中を押され、後は、何もなかった様な母の態 度、目が合うとにらみつけられとても苦痛でした。僕は姉と母との母子家庭です。入部した時母は、 館長先生に、この子は、父親がいません、男の子として、しっかり強い子供にして下さい。今は他人 にしかってもらえると言うことは、幸せな事だと思います。と言ったそうです。メーンとひびく大き な声、しっかり打てと先生のきびしい声、「うわぁーすごい」これは僕が見た感動の一瞬でした。
  その日からたくさんの事を学んでいます。面をつけたとたん息はしにくい、耳は痛い、視界はせまい、何もかも自分の思うように行かなくなったのです。それが僕の挫折の始まりでした。途中で胸が 苦しくなり、たびたび休憩ばかり「どうしたの」と聞かれると心臓が痛い、苦しいと何度もくり返し訴えました。おばちゃんから母に、練習をすると心臓が痛いそうなので一度病院で見てもらって下さ い。と告げられ母も心臓と聞くと心配だったのでしょう、レントゲンを取りに直行しました。母が館 長先生に報告に行き、その結果は見事に何もなく絶好調でした。その時周りからは、安堵から大きな 笑いで良かったねという声、もう「淳ちゃんは、ただしんどいだけだったんだろう」とやさしいおば ちゃん達の声が、飛び交ってきました。今になって考えれば夏の暑い中での練習に胸が苦しかったので心臓が痛いと思ったのかも知れません。面を着けたままもどしたり、面を外した途端もどしたり、 仲間に迷惑ばかりかけてきました。館長先生は「自分に負けるな」と言われましたが正直自分に「負けてもいい」ただしんどいだけや、誰にも分からへんと、心の中で叫んでいたのです。そんな時、お ばちゃんから「頑張っていたら春の新人戦に出れるよ」と言われ、その目標に向かって歯をくいしば り頑張ってきました。剣道が好きになり、今いられるのは、やめたいと思った時しんどいからと言って練習を休んでいると仕事から帰って来た母と、いろいろな格闘の中連れて行かされたことが、剣道 を好きにしてくれた母の努力もあり感謝しています。最初は何でこんなに嫌がる僕を無理やり連れて 行きしんどいのは僕なのにと母を怨みました。母は仕事で疲れて帰り、それから食事の用意・洗たく・ その他色々一人二役で一生懸命頑張って弱音をはかず一番苦しいのは母のはず、そんな母のおかげで 今大好きな剣道を打ち込む事が出来ています。休みの日は姉一人で留守番、僕と母は試合、姉から母を独占し淋しい思いをしているはず、大きくなったら男として姉と母をしっかり守っていきたいと思います。今まで支えてくれた大切な人達がいます。母は有難いことだと感謝の気持ちを忘れず、あな たは、剣道を頑張る事でお返ししなさいと言ってくれています。これからたくさんの壁にぶちあたる と思います。その壁を乗り越え自分に負けず、いつの日か、あの子は館長先生の教え子だと胸を張っ て言ってもらえるよう立派な人間になりたいと思います。これから中学、高校、大人となっていく中 で、剣道を通して学んだ忍耐、周りの人達への感謝の気持ち、先輩に対する尊敬とあこがれ、後輩へ の思いやり、本当の剣道のおもしろさ、辛い事があっても乗り越えると楽しいことがあると言う事、 又変わって行く世の中において、無関心、無感動の無い様、前を向きしっかりこれからも、文武両道 で頑張って行きたいと思います。
  僕は剣道が大好きです。