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平成19年度 第29回中学生の部 最優秀賞
近畿地区代表
和歌山 弘武館
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「悔しい!悔しい悔しい悔しい!もう負けたくないんや、絶対に。」
先生の思い、家族の支え、周囲のはげまし、そして私自身の「気持ち」。その力が「きっと私を強く
する」。
「あぁしんどい。もう今日は塾もあるし、練習行かん。」
「あんた今はみんな黙っているだけやで。そんなんばっかりしてたら、いつかは見放される。うち
からの警告や。」
こんな母とのやりとりは、中学2年の中頃から続いていました。クラブもまともに出ていかず、弘
武館の練習もさぼりぎみだった私は母からの警告も「はいはい。」と心の中で聞くだけで話を流していました。週一回二回の練習でも、先生は私にきつく怒る事はありませんでした。その内に、まだ大丈夫という変な安心感が生まれ、益々気持ちにやる気がなくなってきました。集中力は欠け、何にでも適当で、その時期は何かに真剣になるという事は一切ありませんでした。小学校の時は、試合に出れると言う事が嬉しくて練習へ行くのも楽しかった私でしたが、中学へ入ってから「遊びたい」の気持ちの方が強く、実際、遊びほうけていました。若先生はこの時、私に今の状況を分からせる為にあえて何も言わなかったそうです。
朝学校に行って、勉強をして、友達と一緒に帰宅して、練習の時間になったら、「頭痛い。」「熱あるから。」と言って練習を休み続けた事もありました。前の私なら一日練習を休んだだけでも不安になっていたのに、この時の私は、「まぁ大丈夫。」があたり前になっていました。そんな私を変えたのは、若先生の思いからでした。
ある日、久しぶりに練習に参加した時、期末試験があったので、「一週間休ませて下さい。」と先生に言った所、先生はひどく怒り、私にこう言いました。
「めったに練習にも出てこない奴が、テスト期間やから休ませて下さいやと!何を言うてるんや。
先生はお前に腹立ってたけど、お前は気付くと思ったから言わんかったんや。皆裏切って、先生裏切って何が楽しい。いい加減にしとけ。お前に本気でまだ剣道やる気があるんやったら、一週間、休まず練習出てきてみろ!」
静まりかえった道場に、若先生の声が響きました。帰る時、車に乗った瞬間涙があふれて止まりませんでした。怒られた事の涙ではなく、自分が行ってきた事への後悔の涙でした。車で母に、「だから言ったやろ。うちも分かってたから黙ってたんよ。あんたが悪いんや。なぐさめたりせんからな。泣いたりするな。先生の方が泣きたいはずや。ここまで言われて悔しかったらもう一回自分とぶつかってこい!」と言われた私は、認めてもらう為、もう一度剣道と、若先生と向き合う事を決めました。振り返ってみると、私は悔しいという気持ちを忘れていた気がします。試合に負けても悔しくない、勝つという事にこだわらない、それが全て剣道に出てきて、思うように体が動かなくても気にしない。先生の言葉で気付かされて考えてみると、勝負をしている者として恥ずかしくなっていました。その後、練習に毎日参加した私は、若先生にこう言われました。「わしは、お前が分かってくれる子やから言うたんや。勉強忙しくてもお前やったら両立できる。頑張れよ!」若先生の本当の気持ちを聞いた時「まだまだ私は頑張れる」と自信がつき、「剣道をやってよかった!」と涙を流しながら思いました。
先月10月8日には全日本女子個人戦にも出場し、私の中で剣道という存在が更に大きくなりました。来春、私は高校生になります。まだまだ学ばなければならない事が沢山あります。新しい事にもチャレンジしたいです。そして剣道と共に成長したいです。
まだこれから先、どんな事が起こるか分かりません。でも私は、どんな時でも「一生懸命」になる事を忘れません。ただ一生懸命になるという事で何でもできるからです。
いつも私に力をかしてくれる先生、支え見守ってくれる母、心から「ありがとう。」と言いたいです。何歳になっても、若先生の元で剣道をしたいと思いました。
悔しさ、後悔、沢山の涙、はげまし、支え、先生、そして何よりも剣道という友がきっと私を強くする。
私を支えてくれた全ての人に感謝し、「ありがとう!」
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